グミ助が中年の危機(ミドルエイジクライシス)に陥ってそこから少しずつ脱出できそうになっている話

日常

およそ2年前の2021年5月ごろ、グミ助は適応障害の診断を受け1ヶ月ほど仕事を休んだことがある。会社や職場上司、メンバーの多大なるサポートによって休暇中は完全に仕事から離れることができ、1ヶ月しっかりと心身を休めることができた。あの時サポートしてくださった方々には本当に感謝している。

今、思い返すと適応障害になった原因は色々とあったと思うが、一番大きな原因はこの「中年の危機」に陥ってしまったことではないかと思う。

「中年の危機」について簡単に記しておくと、40代から50代の中年期に訪れる人生に対する様々な心理的な葛藤や自己評価の変化を指す言葉である。20〜30代にかけては仕事もプライベートも、目標に向かって、より良い結果だけを目指してひたすら上にあがっていくことを頑張っていればよかった。40代になるとある程度思い描いていた環境やものが手に入ったりする。ある時ふとその状態に対して、思い描いていた状態よりも低い結果に落ち着いていたり、目標を達成して次の目標を見失っていたり、自分はこのままじゃダメでもっと頑張らないといけないのではないかと思うけど、20代30代の頃に比べて体力気力が思い通りに発揮できず、思い通りに動けずに漠然とした不安に苛まれたりする。個人差はあるが、こういった状況から心身のバランスを崩してしまう人も少なくない。

まさか自分がこういうことで病院にかかるなんて思ってもいなくて、なぜ自分がこうなったのかもよくわからずにいたのだが、この「中年の危機」という言葉を知った時に、自分に当てはまる点がたくさんあって妙に納得できたのだった。

「中年の危機」は「人生に対する様々な心理的な葛藤や自己評価の変化を指す言葉」なので、病院にかかって薬をもらったからといって治るものではない。症状は軽くできるかもしれないが、「人生」という人間の根本的なところに起因するため、下手すると一生つきあっていくことになるかもしれない。

人生100年時代、グミ助としてはこの状態であと60年耐えることは到底できないわけで、なんとかこの状況を変えるべく、行動に移した。

まずは、仕事のことで頭がいっぱいになっている状態では落ち着いて自分の今後を考えることができないと考えた。そこで、今抱えている仕事の役割や責任を一旦肩から下ろすことに決め、それまで担っていた管理職を辞し、現場に戻してもらった。上司から与えられた仕事を適切に遂行するだけで良い立場に戻してもらったのだ。これにより、仕事はその日中に完結し、退勤後や休みの日も仕事のことで頭がいっぱいになる状態からは脱することができた。人は脳のキャパシティーを超えてしまうと物事を冷静に判断する能力が著しく低下する。今のこの苦しい状況から逃げ出すためだけに、なんでもいいから環境を変える、つまりは何も考えずに退職や転職をしてしまうという事態を避けるためにも必要なことだった。

長年、今の会社で管理職をしていた人間にとってはかなり勇気のいる決断だった。今まで部下として接してきたメンバーの中に自分が戻るわけで、周りの目は気にならなかったといえば嘘になる。そんなグミ助を同じ現場メンバーとして受け入れなければならない元部下としても戸惑いがあっただろうと思う。そんな中でも現場メンバーは変に気を使うこともなく、同じ仕事をする仲間として良い意味で普通に接してくれたことは非常に感謝している。

次に、これからの自分のキャリアについて考えた。今の仕事をこのまま続けたいのか、違う仕事をしたいのかという観点。グミ助は長年エンタメ系の業界にいて色々な貴重な経験もたくさんさせてもらい、振り返ると充実したキャリアを歩ませてもらっていた。一方で、違う業界に興味を持っていたため、転職を視野に入れて情報収集を始めた。

そんなグミ助の背中を一気に押したのが社内公募だった。社内公募でグミ助が希望する業界に関わる業務を担当している部署の人材募集があった。すぐに応募し、募集元の部署との面談でアサインされる業務内容を確認した。転職よりも社内異動で未経験の業界にチャレンジできるのはメリットがたくさんあること。そして、今の部署では管理職から外れているため、身軽だったこと。そもそも管理職を辞した時点でプライドなんてかなぐり捨てていたため、ゼロから新しいキャリアをスタートすることについても抵抗がなかった。これからのキャリアを再スタートさせるための環境としては申し分ない状況であると判断して、正式に異動を申し出た。

未経験業界への異動というだけで大きな決断だったわけだが、異動を決めてから意図していなかった変化がもう1つあった。それは、当初予定されていた異動先の担当プロジェクトが会社の都合でなくなったため、別の業務に変更されたことだった。最初は企画・制作関連の業務だったが、それがマーケティング・セールス関連の業務に変更になった。もちろん、事前に会社から、それが嫌なら異動をキャンセルしてもよいという説明をしてくれたが、それでもいいと、えいやと飛び込んでしまったという経緯がある。

今、異動先の部署で全く未経験の業界でほぼ未経験と言っても過言ではないマーケティング・セールスの業務を担当している。自分ができるのか?という不安と闘いながらマーケティング・セールス関連の本を片手になんとかかんとか働いている。そして驚くべきことが、そんな状況を楽しんでいる自分がいることである。

未経験の業種・職種なので、全くゼロからとなると不思議なもので、「仕方がない」と割り切ることができる。全くゼロだからこそ、今できる自分の最大限がこれですと正直に言わざるを得ない。それが及第点なのかどうかもわからないから見てもらうしかない。見てもらうしかないからどんどんアウトプットしていくしかない。そのアウトプットに対してどんどんフィードバックをもらって進めていかないと仕事が終わらないわけである。完全なる新人なので、プライドなんて皆無なのである。これがもし、自分に経験があったりすると変なプライドが邪魔して、こんな割り切った仕事の仕方はできなかっただろうなと思う。やることなすことが初めてで、やればやるほど自分が成長していくのがわかる。そんな状況を楽しんでいるし、こういう状況をもしかしたら自分は求めていたのかもしれない。

「計画的偶発性理論」というものがあるそうだ。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される、という考え方らしい。

よくよく考えてみると、今までも自分が思い描いていた通りのキャリアを100%歩めているかというとそうではない。キャリアを歩んでいくなかで出会う人であったり、出来事であったり、外的な環境変化をきっかけとしてキャリアの方向性や自分の興味が変わることがたくさんあった。今の時代ならなおさらで、社会はものすごいスピードで変化している。そんな中でガッツリ計画立てたキャリアを歩める人ってどれだけいるのだろうか?

自分が今、興味を持てるもの、面白そうと思えるものがあるのであればとりあえずそこに飛び込んでみるといいかもしれない。数ヶ月後にはその場所は無くなってるかもしれない。どれだけ計画したって数ヶ月後には社会は変わっている。そもそも、変化の激しいこの現代社会において、誰だって急に未経験の仕事をやらざるを得ない状況も大いに発生しうる。だったら、人からやらされる前に、自分から取りに行った方がいいはずだ。早くしないと他の人に取られてしまう。プライドとか、肩書きとか、経験とか年齢とか気にしてる場合ではない。

そんな考え方ができるようになって、グミ助は今「中年の危機」という長いトンネルから抜け出せそうな気配を感じている。まだ、完全に抜け出したと言える自信はないのだが、会社を休んだあの日に比べると、確実に自分が笑っている回数は増えていると確信している。

コメント

タイトルとURLをコピーしました